コンデンスリッチ豊胸

脂肪注入による豊胸手術は、最近日本でもポピュラーになってきました。
当院は2010年、他院に先駆けてCRF(コンデンスリッチファット)による脂肪注入豊胸手術を導入。以来現在までに2,600例以上のCRF 豊胸を行い、その内570例以上ではバッグ(豊胸インプラント)の取出しと同時にCRF豊胸を行いました。こうした豊富な経験と実績に裏打ちされ、現在、THE CLINICで行う脂肪注入豊胸では、術後にしこり、脂肪壊死を生じる例はほとんど見受けられません。しかしその一方で、他院のトラブル症例の受け皿である“豊胸脂肪注入しこり外来”には、今も多くのゲストが来院します。脂肪注入豊胸が人気を得るにつれ、脂肪注入に伴うしこり(脂肪壊死)のトラブルが増加傾向にあるのも事実なのです。
そこで今回は、脂肪注入豊胸の定着率を上げ、しこりや脂肪壊死に陥らないための4つのポイントを、当院の経験と最新の医学論文を踏まえて説明します。

脂肪注入豊胸手術のポイント1:注入脂肪は、適切な部位から、適切な方法で採取する

脂肪の採取部位として特に適しているのは、太腿、下腹部、腰だとされています。
また、脂肪採取の際は乱暴な脂肪吸引を避け、丁寧な吸引が求められます。よって脂肪採取圧は1気圧以下(0.5気圧以下推奨)で行う必要があります(これはやや専門的な知識ですが、カウンセリングの場で話題に出して、ドクターの知識の深さを探ってみても良いでしょう)。

脂肪注入豊胸手術のポイント2:適切に脂肪の処理を行う

脂肪の定着には元気な(健全な)脂肪と脂肪幹細胞(ASCS)が同時に存在する必要があります。
ところが、吸引した脂肪には元気な脂肪だけでなく、役に立たない脂肪、弱った脂肪も含まれます。また、定着率を高めるために不可欠な脂肪幹細胞が乏しいことも分かっています。
そこで、これを良い脂肪(不純物がなく、脂肪幹細胞を豊富に含む脂肪)に変えるため、一定の処理を施す必要があります。そのやり方として、現在推奨されている2つの方法を紹介しましょう。

代表的な、2つの脂肪の処理方法

1つはCAL(脂肪幹細胞添加、セリューションがその代表)という方法です。コラゲナーゼという酵素を加えて脂肪幹細胞を分離した後、注入脂肪に添加することで、注入脂肪中の幹細胞の量を増やします。
もう一つはCRF(コンデンスリッチファット)という方法です。これは、採取した脂肪に含まれる役に立たない脂肪や水分を特殊な遠心分離機で排除し、定着に必要な元気な脂肪細胞と脂肪幹細胞だけを濃縮(コンデンス)するという方法です。

THE CLINICで採用している注入脂肪の処理方法はCRF

CALは、通常の吸引脂肪に比べれば、確かに優れた注入脂肪です。しかし、採取した脂肪を酵素処理して脂肪幹細胞を取り出す必要があるため、比較的脂肪量が少ない日本人には不向きだと考えられます。また、処理する際、コラゲナーゼという化学物質を使う点から、安全性が危惧されています。さらに、施術に時間がかかるため、元気な脂肪がより多く死んでしまうことにも懸念が残ります。
そこで当院では、CRF(コンデンスリッチファット)の手法で脂肪を加工します。シンプルかつ必要最小限の処理で、質の良い脂肪を作ることができるからです。もしこれに脂肪幹細胞を上乗せしたい場合は、化学薬品を用いない方法で脂肪幹細胞を濃縮した「マイクロCRF」という脂肪細胞を追加することも可能です。

脂肪注入豊胸手術のポイント3:適切な注入方法、優れた注入技術で施術を行う

多くのみなさんは「ポイント2」で示した注入脂肪の処理の仕方に注目してクリニックを比較しがちです。しかし実は、この「ポイント3」こそが最も肝心な部分だと言っても過言ではありません。

脂肪は直径2.4mm未満で注入すべし

現代の脂肪注入技術は2006年にコールマン先生が発表した“コールマンテクニック”が基本になっています。コールマンテクニックとは、要は脂肪が生き残るため、また、しこりを作らないためには、できるだけ細かく脂肪を注入する必要があるという考え方です。
また、これを基礎医学的に証明した有名な論文を東京大学のグループが発表しています。その決定的な画像が(図1)です。
分かりやすく説明すると、手術で注入した脂肪は外側から0.3ミリメートル位がそのまま生き残り、最高1.2 ミリメートルまでが再生可能、それより内部は壊死してしこりになるか、全く生き残らないで消えてなくなるということを示しています。
当院ではこの事実を踏まえ、直径2.4ミリメートルまでの細い麺状注入(2.4ミリ・ヌードルインジェクション)を徹底しています。
ところで、よく手術時に使用する注入管(カニューレ)を細くすればそれだけ細く注入できるのでは?と誤解されますが、実際はそうではありません(直径2.4ミリメートル以下のカニューレで注入したからといって直径2.4ミリメートル以下で脂肪を注入できるわけではありません)。結果を左右するのは、結局はドクターの技術力です。

図1:注入脂肪が再生可能な範囲/自治医科大学 吉村浩太郎教授より提供

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脂肪の注入量は、適量を順守すべし

脂肪の注入量も、バストアップの程度、しこりのできやすさに影響してきます。
多くの脂肪を注入すれば、それだけバストアップが期待できるとお考えになる方がいらっしゃるかもしれませんが、事実は異なります。
その方にとっての適正量以上に注入しても、脂肪は生き残りません。逆に壊死に陥り、時間とともにバストが小さくなるか、しこりとして残ってしまうだけなのです。
有名な論文を紹介します。
下がその概念図です(図2)。簡単に説明しますと、ある点を境に、劇的に脂肪の定着が悪くなること(=生き残らないでしこりになること)を意味しています。
脂肪注入時には、決して多く入れ過ぎてはいけないのです。

図2:注入脂肪量と脂肪の定着率の関係 /Plast Reconstr Surg. 2014 Mar;133(3)より引用

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脂肪注入豊胸手術のポイント4:ご自身のバストの状態

ここで最も大切なことは皮膚が伸展しやすいか否かです。皮膚が伸びやすい方ほど定着率が高く(注入脂肪が定着しやすい)、そうでない方ほど定着率は低いとお考え下さい。
授乳後の方や豊胸インプラント(シリコンバッグ)が入っている場合などは皮膚が伸びていますので、定着率が高い傾向にあります。
では、皮膚の伸びが悪い方はどうすればいいか?ですが、2回に分けて注入すれば素晴らしいバストアップ効果が得られます。1回目に皮膚が(一時的な腫れなどもあり)伸展されている分、2回目に大きく期待ができます。
もしくはBRAVAと呼ばれる、皮膚を陰圧で伸ばす器具を併用すれば、俗にいう“ペタンコ”の胸の方でも良い結果が得られます。なお、このBRAVAは乳癌の術後、乳房再建にも応用され始めており、最近話題になっています。

まとめ

やや医学的、科学的な話でしたが、ここに示した情報は、脂肪注入による豊胸手術、乳房再建に携わる医師ならば必ず知っておくべき大切なことばかりです。しかしながら、現実的には豊胸手術を行う医師全員がこのことを知っているわけではありません。中にはいまだに古い知識に基づく脂肪注入豊胸を行い、大きなしこりを作ってしまう施設(クリニック)も数多く存在します。
今後、脂肪注入による豊胸手術をお考えのみなさんも、是非、上記の基本的な情報を知っておくと良いでしょう。施術を任せるに足る、優れたクリニックを見極めるための試金石になるはずです。

文献

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